コロンビア・メデジンのケーブルカー
人口230万のコロンビア第二の都市メデジン。
メデジンは麻薬組織メデジンカルテルが跋扈し、犯罪多発地域として有名であった。1990年代まで人口の80パーセントが貧困層であり、空いていた盆地の都市の斜面に、内戦から逃れてきた貧困層によるバラックが張り付くように形成されていった。当然公共サービスは行き渡らず、ごみの不法投棄などが問題となる。
貧困地区の一つであるメデジン北端の斜面地・サンタドミンゴ地区。この地区からほど近い低地にはメトロのサンタドミンゴ駅があるが、そこから斜面上の貧困地区には交通インフラが整備されていないため、街はずれに行くには徒歩で約1時間かかっていたという。中心部から離れているため治安も最悪だった。
2004年、この斜面に全長2Kmのケーブルカー「メトロカブレ」を通すことで、低地まで1時間の移動時間が10分に短縮され、多くの人が中心部に通勤できるようになった。
定員10名のゴンドラが、20秒間隔で運行する。運賃は2000ペソ(約70円)。
斜面にはケーブルカーが設置しやすく、建設費も地下鉄などに比べると安い(2600万米ドル)。ゴンドラが上から街を見下ろすので監視効果があり、治安の改善にも役立った。
移動時間が短縮されたことにより、住民は都心部への通勤が可能になり、所得が増えて消費が拡大。地区の建築物も次々に更新され、景観も良くなった。
メデジンはケーブルカーのみならず、メトロ、BRT(バス・ラピッド・トランジット)、エンシクラ(シェア自転車)、斜面エスカレータ、LRT(ライト・レール・トランジット)などを統合的に運用。これらのことにより2012年、ウォールストリートジャーナルより「最も革新的な都市」に選ばれている。
参考:
「コロンビアの都市政策:貧困からの脱却過程・メデジン市を中心に」(2014年都市経営:福山市立大学都市経営学部紀要)、アルフレッド ゴメス=セルダ 著『雨上がりのメデジン』(2011年鈴木出版)、ガイ・グリオッタ,ジェフ・リーン著『キングズ・オブ・コカイン : コロンビア・メデジン・カルテルの全貌(上/下)』(1992年草思社)
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